そもそも「つかみ」とは?受講生を惹きつける講師の話し方

「つかみ」と「アイスブレイク」の違い

このページをご覧になっている方は、ほとんどの方が講師だと思います。そんな講師にみなさんに質問です。

Ichikawa
「つかみ」と「アイスブレイク」の違いは何でしょうか?

いきなり答えを求めるのではなく、まずはご自身で推察をしてみてください。あなたの考える「つかみ」と「アイスブレイク」の違いは何ですか?

答えは最後にお伝えします。

そもそも「つかみ」とは

私にとって、つかみとは聞き手の興味や関心を惹きつけ、期待感を与える技術です。当然のことながら自分の教育効果を高めるために行っています。

Ichikawa
講師による教育効果が最も高くなる瞬間とは、どのようなときでしょうか?

本当は、これもじっくりと考えていただきたいところですが、質問ばかりでは話が進まないので答えを言います。講師による教育効果が最も高まる瞬間は、受講生がやる気になっているときです。

いくら講師が、大切な話をしたとしても受講生に聞く気が無ければ意味がありません。 ぶっちゃけた話、受講生にやる気があれば、講師は普通に話をしているだけでも受講生が勝手に必死になって勉強をしてくれます。

だから、私にとって良い講師とは、受講生に「先生の話を聞きたい」と思わせてから情報を伝える講師です。講師の話への期待感を与え、「続きが知りたくて知りたくてどうしようもないです!先生、早く話してください!」という状態にできる講師が良い講師だと思っています。

講師のつかみとして適切なもの

正直な話、つかみネタは何でも良いのです。重要なのは、「つかみ」の目的を果たせるかどうかです。講師や講座に対する興味や期待感を持たせることができれば、何でも構いません。

ここで忘れないでほしいのは期待感という言葉です。そもそも何に対して期待をさせるかというと「講座の内容」についてですよね。

そのため、効果的なつかみは本題へと繋がるものでなくてはなりません。しっかりと本題へと繋げることができるのなら、つかみネタは本当に何でも良いのです。

誤ったつかみ例

では、マジックで例を挙げましょう。決してマジックが悪いのではなく、「マジックの使い道を誤ると、つかみとしての効果がなくなる」というお話です。

仮に、講師がスプーン曲げを見せたとしましょう。意外と上手なもので、講師のスプーン曲げを見ている受講生は、少しずつザワザワし始めて、驚きの声も上がっています。スプーン曲げを終えると、受講生のみんなが笑顔で拍手をしてくれました。ここで、すかさず講師が次のように言いました。

「ありがとうございました。それでは、講座を始めていきましょう」

……もうね、何のためにスプーン曲げを見せたのかと。スプーン曲げと、講座に何の関係があるのかと。小一時間くらい問い詰めたいですね。これでは、せっかく温まった受講者の心も一瞬で現実に引き戻されてしまいます。

大切なのは、何のためにスプーン曲げを見せたのか…。これをしっかりと言語化することです。

つかみの手段

私は普段、つかみの講座をしていますが、その中では驚きや謎、体感をもって期待感を与える技術と説明をしています。そう、つかみの手段は驚き・謎・体感を与えることなのです。

「驚き」の効果

  • 「え?なんで!?どういうこと!?」と興味が湧く
  • 冷静さが失われて講師の言葉が入りやすくなる
  • 講師の話を聞きたくなる

「謎」の効果

  • 「答えが気になる!」と興味が湧く
  • あらかじめ推察させることで、記憶が定着化する
  • 講師の話を聞きたくなる

「体感」の効果

  • 実際に体感したことで自分事になる
  • 講師の話を信じるようになる

「驚き」や「謎」は、まず話を聞いてもらうために必要な要素です。そして、「体感」は聞いた話を信じてもらうために必要な要素です。

どのようなネタで、驚きや謎、体感を刺激するかは、今後の記事でご紹介していきます。

重要!つかみの効果

つかみは、自分のメッセージ(本題)への期待感を高めるための技術なので、「その場で役立つ技術」と考える人が多いです。でも、それだけではないんです。

つかみの効果は継続的です。一度、受講生の心をつかむと、それが印象に残り、記憶に残ります。そのため、「またあの人に会いたい。」「またあの人に教わりたい」という気持ちが生まれます。そして、2回目に会ったときも、つかみの印象がしっかりと残っているので、最初から期待感が高い状態でお話をすることができるのです。

つかみネタの集め方

基本はネタをパクる

私がオリジナルで考えているつかみネタはほとんどありません。大抵が、誰かがやっていたネタのパクリです。

ただ、ネタを「メイン」にするのではなく、ネタを通して自分のメッセージを伝えることを「メイン」としているので、ネタは「サブ」です。言わば、引用と同じような考え方で行っています。

ネタは常にストックしておく

基本は、伝えたいメッセージが決まってから、それに適したつかみを選択します。ただ、その場で新しいつかみネタを探すことはほとんど行いません。すでにストックしているネタから探すことが多いです。

私はテレビや本を見て、「お、このネタは面白いな」「このクイズはうまいなぁ」と思ったら即座にメモをします。そして、それを家族や職場の同僚に試し、相手から良い反応がもらえたら自分のネタとしてストックします。最初は、クイズ番組を見て面白いクイズをメモするところから始めると良いでしょう。

そして、自分のメッセージに絡められそうであれば、改めて人前でつかみネタとして活用するようにしています。いきなり人前で披露するのではなく、一度、雑談の中で試しておくことも忘れないでください。

あとは日ごろからネタを探す習慣をつけておくと、面白いことがあったときなどに、反射的に「ネタにできそう」という思考が働くようになります。まずは、意識的にネタ集めをするところから始めてください。

「つかみ」と「アイスブレイク」の違いの答え

さて、自分なりの違いは見つかりましたか?「つかみ」と「アイスブレイク」の違いを「手段」から考えると、分かりにくいと思います。ところが目的から考えると、その違いがはっきりしてきます。

つかみの目的は、受講生を惹きつけ、続き(本題)への期待感を持たせることです。一方のアイスブレイクは緊張感をほぐすために行うものです。なので、まったくの別物です。